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「地球交響曲(ガイアシンフォニー) 第三番」上映会 9月

更新日:2023年9月14日

地球(ガイア)の声が、きこえますか。


映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』とは、イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロック博士の唱えるガイア理論、「地球はそれ自体がひとつの生命体である」という考え方に勇気づけられ、龍村仁監督によって制作されたオムニバスのドキュメンタリー映画シリーズです。

美しい映像と音楽、珠玉のことばの数々によって織り成されるドキュメンタリー映画『地球交響曲』は、環境問題や人間の精神性に深い関心を寄せる人たちのバイブル的存在となっており、1992年公開の「地球交響曲第一番」から2021年公開の最新作「第九番」まで、草の根の自主上映を中心とした上映活動だけで、これまでに延べ、250万人に上る観客を動員、その数は今なおとどまることなく、かつてないロングランヒット作となっています。

小さな上映会 in 西宮では、9月に『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第三番』を上映します。
 

上映作品:
 『地球交響曲 第三番 -GAIA SYMPHONY No.3-』

上映日時:  ① 9/6(水) 13:00〜15:30  ② 9/10(日) 15:00〜17:30  ③ 9/20(水) 13:00〜15:30
 ④ 9/24(日) 15:00~17:30

チケット代金(当日お支払いください):  a) 映画+上映後のお茶付きシェア会 1,500円  b) 映画のみ 1,300円

会場:
studio awai(あんのん舘2F・西宮市田中町4-9)



お申し込み方法:
 下記のフォームへご記入ください。  https://www.unknownkan.com/events/gaia-symphony-no3
 


「“母なる星地球(ガイア)”は、それ自体が一つの大きな生命体であり、我々人類は、その大きな生命体の一部分として、他の全ての生命体と共に、今、ここに生かされている」

これは地球交響曲「第一番」、「第二番」そして今回完成した「第三番」を貫いて流れる基本コンセプトです。この考えは別に目新しいものではなく、ほんの数百年前までは、世界中の全ての民族、全ての人々が誰でも知っていた事であり、又科学的に検証しても正しいと言える厳粛なる事実です。にもかかわらず、20世紀末の今を生きる私達は、この事実を、実生活の中でほとんど実感として感じられなくなって来ています。ここに我々の時代の不幸、そして危険が潜んでいます。

“母なる星地球(ガイア)”の大きな生命の中に生かされている、という事実が実感できなくなって来た理由は大きく分けて二つあると思います。その一つは、もちろん最近の技術文明、物質文明のめざましい進歩です。この進歩のおかげで、私達は、生きることのほとんど全てを自分たちの力でコントロールできる、と思い始めています。さらに、35億年という歳月をかけて営まれて来た“母なる星地球(ガイア)”の生命さえ、コントロールできるかの如き錯覚を抱き始めているのです。これは、とても危険な兆候です。

そして、もう一つの大きな理由は、私達に“死”が見えなくなって来た、という事でしょう。私達が生きているという事は、その一瞬一瞬が無数の“死”に依って償われています。食べる事一つ取ってもそうでしょう。私達は食べ物になってくれる無数の生命の“死”に依って生かされている。しかし、その“死”は現代の日常生活の中ではほとんど見えない。さらに、私達が今こうして生きている、という事は、百年前、千年前、一万年前に、現実に二人の人間がいて、その人たちが喜びや悲しみ、苦しみを抱きながら必死で生きてひとりの子供を産み育ててくれたからこそ、今、私がこうして生きている。今の私達の“生”は、無限に連続している“生”=“死”の環の中で、今たまたま、ひととき生かされているのです。しかし、この厳粛なる事実さえ、今の私達の日常生活の中ではほとんど実感できなくなっています。


“死”は敗北ではない。 “死”は終わりではない。

“死”こそ、行き続ける者の“生”を激励し母なる星地球(ガイア)の大いなる生命に生かされていることへの感謝と喜びを呼び覚ましてくれる一瞬なのです。

我々の祖先は、様々な「神話」に託してこの厳粛なる事実を、日常生活の中で常にリアルに思い出し続けていました。その「神話」を失ってしまった今、私達は、21世紀の日常生活に通じる、新たなる神話の構築が必要なのではないでしょうか。

私達の生命が、“母なる星地球(ガイア)”の大いなる生命の中に生かされている、という事実は、技術文明、物質文明がこれほど迄に進歩した今でも、何一つ変わることがないからです。


龍村仁

 

星野道夫(故人)

 写真家、エッセイスト


撮影

1996年9月7日~11日 アラスカ・フェアバンクスで星野道夫メモリアルに参加

     9月20日~10月7日 アラスカ、カナダ・クイーンシャーロット島 

1997年3月27日~4月10日 アラスカ各地

1952年、日本生まれ。

1996年9月に共にアラスカの大自然を旅しようと計画していた星野道夫が、8月8日、ロシアのカムチャッカで、ブラウン・ベアに襲われてなくなった。(日本のテレビ番組のための撮影中のことだった。)アラスカに移り住んで20年、マイナス40度の氷河地帯にたったひとりで一ヶ月半もキャンプを張り、天空の音楽、“オーロラ”の写 真を撮り、何万年もの間この極北の地で続けられている、鯨、狼、熊、カリブーなど動物たちの営みを撮り続けてきた彼の写 真はすでに世界的に高い評価を受けていた。彼の眼差しの中に、個体の死を越え、種の違いを越えて連綿と続く、大いなる命、悠久の命への畏怖と愛があったからだ。その彼の眼差しが最近はこの極北の地に生き続ける人々に注がれるようになっていた。ネイティブの古老達が語り伝える神話の中には、人間が宇宙的スケールで動いている大自然の営みと調和して生きてゆくための様々な叡智が秘められている。

その事に気づいた星野は、20世紀末の技術文明の中に生きる私達が、そこから何を学び、未来の世代に何を伝えてゆくべきかを探す旅を始めていた。

「アラスカが今後どうなってゆくかは、20世紀末に残された人類の最後の期末試験のような気がする」というのが星野の口癖だった。星野の“死”はこの旅を不可能にするかに見えた。しかし、そうではなかった。9月末に敢行したアラスカの“旅”で、私達は出会う全ての人々の中に鮮烈に生き続けている星野の“魂”に出会った。

彼の“死”をネガティブに受け止めている人は誰もいなかった。いやむしろ、“死”を通 して彼は、生き続けている私達が、今何に気づき、未来の世代に何を伝えてゆくべきかを、さらに明確にわかりやすく示してくれたのだ。

この旅は、しばらく続くだろう。


著作・写真集:

「グリズリー」(平凡社)、「アラスカ 極北・生命の地図」(朝日新聞社)、

「Alaska 風のような物語」(小学館)、「イニュニック」(新潮社)、「アークティック・オデッセイ」(新潮社)、「アラスカ・光と風」(福音館書店)、「旅をする木」(文藝春秋)、「ナヌークの贈りもの」(小学館)、「森と氷河と鯨」(世界文化社)、「ノーザンライツ」(新潮社)、「表現者」(スイッチ)



フリーマン・ダイソン

 元プリンストン高等学術研究所教授。宇宙物理学者


撮影 1996年8月15日~29日 アメリカ・ベーリンハム、カナダ・ハンソン島


1923年イギリス生まれ。アメリカ・プリンストン在住。

弱冠24歳の時、相対性理論と量子力学を統合する数式(ダイソン方程式)を発見し、今世紀最大の理論物理学者としての名声を不動のものにした。アインシュタイン、オッペンハイマーから招かれ、若くしてプリンストン高等学術研究所の物理学教授となったフリーマンは、科学はもちろんのこと、芸術、宗教、哲学等、あらゆる分野に深い造詣を持ち、“人”という種の未来について、生命の未来について、宇宙的な視野から語ることの出来る今世紀最大の叡智と言っても過言ではない。

その一人息子、ジョージ・ダイソンは、アラスカの古代海洋民族アリュート族のカヤック(カヌー)を20世紀に復元した。今や世界的に有名なオーシャン・カヤック・ビルダー。

16歳の時、父のもとを飛び出し、アラスカ、カナダの海岸に渡り住んで、自然の中で生活していた。

今回の撮影は、カナダ・ブリティッシュ・コロンビアの大自然の中にある小さな島、ハンソン島で行われた。このハンソン島は、21年前、フリーマンが家を出ていたジョージと劇的な再会を果 たした思い出の島。当時、ハンソン島で野生オルカ(シャチ)の研究をしていたポール・スポング博士のもとで、その仕事を手伝っていた息子ジョージとの和解を図るため、フリーマンは東海岸のプリンストンから五千キロの旅をしてこの島にやって来たのだ。

思い出のハンソン島で、鬱蒼とした古代からの森に囲まれ、毎日やって来るオルカの神秘的な声を聞きながら、フリーマンは「人間の心は進化するか」「人はなぜ死ななければならないのか」といった根元的な問いに、科学、宗教、哲学に関する深い造詣にもとづいてわかりやすく答えてくれる。


著作:

「多様化世界」(みすず書房)、「宇宙をかき乱すべきか」(ダイヤモンド社)

参考資料:

ケネス・ブラウワー著「宇宙船とカヌー」(ちくま文庫)

テレビ番組「サイエンス・ファンタジー 宇宙船とカヌー」



ナイノア・トンプソン

 ハワイ先住民族、カヌー航海者


撮影 1997年2月15日~3月1日 ハワイ・オアフ島、ハワイ島


1953年、ハワイ生まれ、ハワイ在住。

20世紀末の今、世界各地で従来の歴史観を覆すような考古学的発見が相次いでいる。例えば青森県三内丸山の縄文遺跡の発見は、五千年以上前に我々の祖先がどれほど高度な文明を持っていたかをはっきりと示した。さらにここで発掘された土器とルーツを同じくする土器が、ポリネシアの小さな島でも発見されている。五千年前にすでに人々は、太平洋を航海する術を知っていた可能性があるのだ。

1980年ナイノア・トンプソンは、海図、羅針盤、磁石などの一切の近代器具を使わず、伝統に基づいて復元された古代の遠洋航海カヌーを駆って、星を読み、波や風を感じ、海の自然が与えてくれるサイン(情報)だけを使って、ハワイからタヒチまで五千キロの海の旅を成しとげた。

この旅を通してナイノアは、数千年前に南太平洋のポリネシア諸島からハワイにやって来た祖先たちが、すでにこんなにも高度な技術的、精神的文明を持っていたことを証明すると共に、20世紀に生きる私達の中にも祖先と同じ能力が眠っていて、それを蘇らせることが出来ることを示したのだ。この彼の航海は、ハワイの先住民の人々に、大きな勇気と誇りを与え、自然の営みと調和しながら生きてきた祖先の高度な文明のあり方を学びなおそうとする運動が、次々に自然発生的に起こって来ている。

この彼の営みは単なる懐古趣味ではない。自然との調和を失っている私達の技術文明の方向を正しい方向に修正してゆくためには、21世紀を生きる人々が、自分達の内側の自然と調和する能力を高める必要があるのだ。そのためナイノアは今、古代からの知恵を次世代の子供達に伝える教育プロジェクトに一番力をそそいでいる。

はるか彼方「見えない島を、見る力」を養うことこそ、21世紀を生きる子供達にとって必要なことだとナイノアは信じている。


参考資料:

“An Ocean Mind” Will Kyselka(University of Hawaii)

“Voyage of Rediscovery” Ben Finney(University of Hawaii)

「ハワイイ紀行」(池澤夏樹 新潮社)


 


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